子どもが減って何が悪いか!
赤川 学
筑摩書房 刊
発売日 2004-12
価格:¥735(税込)
冷静に考えてみましょう 2004-12-20
人口は増え続けるもの。少なくとも減ることはない。そういう前提のもとに作られた制度は少子化によって破綻していく。誰でも想像のつくのが年金制度だ。そして経済成長の鈍化。 制度の現状維持を図るために、少子化に歯止めをかけようとさまざまな政策が試みられている。例えば男女共同参画の推進。子育て支援。推進論者たちは女性就労率の高い国は出生率が高いというデータを示し、女性が今以上に社会進出し、男性の育児負担が増えれば出生率は回復すると主張する。果たしてそうか。女性が外に出て働けば子供は少なくなるのではなかったのか。 著者はリサーチリテラシーの観点から独自にデータを分析し、上記の主張が都合のよい国のデータだけを集めた恣意的なものであることを暴いていく。ほかにも誤差の範囲と思われる違いを証拠と見なして都合のよい議論を展開する一部マスコミ。これは欺瞞ではないのか。少なくとも男女共同参画と少子化対策を結びつけることに無理があるのは間違いない。それどころか逆効果かも知れないのだ。 最近ある経済紙に「王子様のいないシンデレラ」という特集記事があった。女性のシンデレラ願望を満たす男がいないというのだ。高度成長期が終わった今、結婚によって今よりいい暮らしができる保証はなくなってしまった。独身の方がいい暮らしができる。結婚しても子供がいない方がいい暮らしができる。社会経済状態とは関係なく願望は高いところにある。これこそ少子化に直結しているのではないか。 著者は少子化を避けられないものとして受け容れ、それに耐えられる社会制度の構築を進めよと訴える。少子化が不利益だとするなら、その不利益を平等に負担できる社会を作れというのだ。何の効果もない政策を(ウソまでついて)次々と打ち出し、税金の無駄づかいを続けるよりも。 少子化を一大事と考えている人にはとんでもない主張かも知れない。しかしそういう人こそ、いっぺん見方を変えて考えてみていただきたい。そのためにはこの一冊が大変役に立つと思う。
タイトルは小谷野敦風。内容は学術書。 2004-12-15
今や主流となった「働く女性を支援することで少子化ストップ!」という官民こぞっての言説に、統計の徹底的な読み直しによって疑問符を突きつける。それどころか、子育て支援は逆に少子化を促進する可能性さえあると主張する。
しかしこの本は、批判だけに終わらない。「少子化ウンヌンにかかわりなく理想は理想として追求すべし」と喝を入れた上で、少子化の進行は都市化した社会では不可避なのだから、それを前提にした制度を構想しようと呼びかける。かつ、年金問題の検討など、みずからいくつかの可能性を提示する。この際、リベラリズムの立場から「望ましい生き方や人生設計」からの中立を強く要求する。当然ながら、結婚している人間や子供のいる人間への優遇策は批判される。
いやァ、タイトルから気楽な読書を期待していたのだが、いい意味で裏切られた。語り口はくだけているが、新書らしからぬ統計データのオンパレード。内容はハード。でも、読みにくくはない。面倒な人は統計の説明を読み飛ばしてもいい(私はそうしました)。私としては、少子化対策の言説批判には納得するけど、赤川自身の構想に触れる後半部分では異論も多かった。統計データから離れて思考実験的な議論に踏み込む部分では、「子供を育てるシアワセな家族」への著者の敵意がヒシヒシと伝わってきた。でも、それはもちろんこの本のキズにはならないだろう。
ところで山田昌弘は近著「希望格差社会」で、厚生労働省の少子化対策の施策は間違っていないが、戦力の逐次的投入になっていて効果が出ないという趣旨のことを述べているが、ぜひ赤川学との論戦を期待したい(赤川の勝ちが予想される)。もうひとつ、新聞・雑誌各誌紙の書評がこの本をどう取り上げるか、そもそもどの程度取り上げるか、非常に興味深い。投じられた一石は、ヘタをすると津波を起こす可能性もある。
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この記事は2006/6/6に作成しました。
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