外務省が消した日本人―南米移民の半世紀
若槻 泰雄
毎日新聞社 刊
発売日 2001-08
価格:¥1,890(税込)
現実の中から鮮明に告発 2003-08-24
本書は、外務省主導による戦後の南米への日本人移住政策の根本的欠陥を、実際にその実施団体の職員とした携わった著者が現実の経験を基にして、明らかにしたものである。その問題点とは、移住政策による自らの機構の増大のため、すなわち自らの組織利益のために、移住政策の科学的検証と立案が全くないままで進められたということである。すなわち、「移住」ということが基本的に何を意味するかという認識が全くないままに行われたということである。その結果が、本来移住の移住の鉄則である「生活水準の向上」があったどころか、非文明地域、未開の地に定住支援が全くないままに放出されたという恐るべき事実であった。この意味において、死んだ人はもちろんのこと、近代、文明から完全に引き離され!近代国家の国民としての日本人ではなくなってしまったのである。それがまさしく「消えた」ということである。このような、政策における科学的検証の欠如は、残念ながら今でも繰り返されている。移住問題でいうと、今度は海外から無秩序に受け入れを行ってしまった。これは、日本語能力もなく、教育水準も低く、社会通念も全く違う南米諸国居住者を、「日系人」であるということのみで受け入れたという、これもまた決定的な過ちを犯している。すでにドイツのトルコ人導入での失敗が明らかであったにもかかわらず、にである。しかも、そうした社会水準の違う者を受け入れる場合には大規模な定住措置が必要とされるにもかかわらず、それも全くない。事実、さまざまな社会問題が現実に発生している。官僚が自ら!の組織利益のために、国民・国益を無視する姿勢は基本的に変化がない。こうした現状にもつながるような、救いようのない事実が実に鮮明に記録されているが、ただひとつ希望の見えた部分があった。それは、著者がボリビア支部長として赴任していたときに「サンファン移住地」の社会開発活動に関わった点である。都市との道路を開通させ、近代的インフラを整備し、教育・文化事業を展開し、人々に希望と文明をもたらそうとした点である。このことは、近代化、開発というものがどのようなものであるのかを真摯に考えさせられる。以上、本書は実際に移住の過酷な現場に携わった著者の「原体験」ともいえるものであり、これがその後の著者による極めて優秀な移住論やその他広範囲の研究業績につながったといえだろう。まさしく、移民問題の第一人者たる著者の力量が余すところなく発揮されている。本書が刊行された際、著者は77歳で、すでに現役を退いて長いにも関わらず、従来までと同様に、こうした渾身の著作が執筆できる、そのバイタリティには、改めて畏敬の念を払いたい。そして、私も自称研究者の一人として、深い尊敬の念を払いたい。
いつまでたってもいきあたりばったり 2002-04-13
ドミニカ共和国に行ったとき、知り合いにサントドミンゴの中央広場の近くにある、琥珀の小物を売っている店に連れて行ってもらって琥珀が貼り付けられたネクタイピンを買った。ドミニカは『ジュラシックパーク』でも触れられた(と思う)琥珀の産地なのだ。店主は日本人移民1世のおばさんだった。そのときはまだ、ドミニカ移民については「移民政策上最大の失敗」といわれていること程度しか知らなかったけれど、1世が琥珀屋さんをやっている風景は、なんだか奇妙にねじれていた。 この本は、たぶん、外務官僚批判の尻馬に乗って企画された本だろうし、内容にもそれを感じさせる部分が多々あるけど、それでも、戦後の移民政策がいかに厚顔で無知蒙昧の輩によって実行されてきたかを知るには欠かせない1冊になるだろう。ドミニカだけではなく、アマゾンもボリビアも、戦後の移民は騙して海外に連れて行ったのだ。
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この記事は2006/6/6に作成しました。
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