土地の神話
猪瀬 直樹
小学館 刊
発売日 2002-04
価格:¥1,365(税込)
「東京」の成立を描いた出色のドキュメント 2003-08-12
東京という都市の特殊性は様々な文脈で語られるだろうが、そのひとつは満員電車に乗って通勤するというライフスタイルにある。その成立の陰に東急王国の創設者五島慶太がいた。「土地の神話」は、日本の都市における不動産業の基本型を発明した五島のドキュメントを克明に描いている。本書が発表されたのはバブル経済真っ只中の1988年だというが、14年後のいまでも、我々の生活を規定する重層低音を新鮮にみせてくれる。東京の人口が急増する大正から昭和初期、五島は都心から郊外にかけて放射線状に伸びる私鉄網をはりめぐらす。同時に東京の西南の緑地を宅地開発した。鉄道を点(駅)と線(鉄道延長)としてではなく、沿線も含めた面としてとらえる不動産業として展開することで、東京を膨張さ!ていった。これが東京のライフスタイルの原型である。結果として「聖なる森」皇居だけが不可侵の東京の中心に残された、とみるのは「ミカドの肖像」で大胆な天皇制分析をみせた筆者らしい鋭い結論といえる。「ミカドの肖像」では西武グループの創始者堤康次郎が描かれた。「土地の神話」は同書の続編でもあるという。皇族の土地を次々と手に入れプリンスホテルを建てていった堤と、不動産業としての鉄道開発に腐心した五島―併読すると日本国の中心都市のかたちを決定づけていったドラマを立体的に読み進めることができる。日本近代の見取り図を映し出してきた筆者ならではの出色の書である。
田園都市の挫折と不動産の栄華 2002-12-16
著者が一貫して追い続ける近代の成立に関する労作。本書中では田園調布や田園都市線のモデルとなった田園都市がいかに不動産業に変化し東京近郊を形成していったかを丹念に追い求めている。なぜ東京近郊に住む僕達は満員電車に小一時間揺られる必要があるのか?なぜ東急沿線には大学が多いのか?なぜ田園都市が日本で実現されなかったのか?なぜ日本の町並みは特殊なのか?後藤慶太の足取りと共に土地の神話(今となっては御伽噺だが)が浮き彫りにされる。都市計画、公共政策、建設に携わる方々には特にオススメ。
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この記事は2006/6/6に作成しました。
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