定常型社会―新しい「豊かさ」の構想
広井 良典
岩波書店 刊
発売日 2001-06
価格:¥735(税込)
優れた知見の創出 2004-11-22
我々は経済成長を諦めるべきではないかという漠然とした思いを、理論として明らかにしてくれた好著。 日本は閉塞観に溢れている。財政赤字、社会保障、失業、環境問題──。だが、子供の数が飛躍的に伸びることは無い。高齢化は進むだろう。画期的な技術革新が起こり産業競争力を高めることはありえない。そこから制度設計したら我々はきっと楽になるのだろうという思いを、「定常型社会」というコンセプトで理論化したのが本著の功績である。 新しいボランタリーなコミュニティというものは、今日のセクター論のキーワードである。公共や市場との連続性という論点もよくあるものであるが、著者の理論の特徴は、営利と非営利の軸とは別に、貨幣的価値、非貨幣的価値というものを提示したことだろう。また、現代の社会をどう捉えるかという第一章で、これまでの経済学における対立軸を超える視点を提示している点に説得力がある。
筆者があとがきで記しているように、四十歳前後から下の世代の共感を呼ぶだろうが、企業や役所の管理職に塊となっている世代(個人的には閉塞感の源のように考えている)には、この理論は受け入れがたいものなのかもしれない。 筆者の今後の関心は、アメリカは科学国家というべきものを形成したのではないかということや、科学の成熟化ということにあるようで、次作が期待される。
成長=絶対的価値ではなくなった 2003-12-18
成長・拡大を大前提としてきた経済(福祉ですら経済成長を前提としていた=ケインズ主義的福祉国家)がいま大きな転換期を迎えている。すでに需要は成熟ないし飽和状態に達しつつある上、今後日本は世界に類を見ない少子高齢化社会を迎え、一方で地球資源は有限であることが誰の眼にも明らかだ。そこで著者は成長を絶対的な目標としなくとも十分な豊かさが実現される社会として「定常型社会」というコンセプトを提案している。
具体的な内容については賛否あるところだと思うが、このような視点に立ってみることは決して無駄ではないはずである。個人的には著者の洞察力や説得力にはいつも感嘆させられているし、語り口にも好感を持てる。著者には他にも好著が多く、40歳を過ぎたばかりという若さからも今後の活躍を期待できる。
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この記事は2006/6/6に作成しました。
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