不平等、貧困と歴史
ジェフリー・G. ウィリアムソン
ミネルヴァ書房 刊
発売日 2003-06
価格:¥2,730(税込)
応用範囲の広い基本書 2003-12-19
開発経済学の授業で必ず出てくるクズネッツ・カーブというものがある。工業化が始まると同時に社会の不平等度は一旦拡大するが、やがて経済が成熟すると格差は逆に縮小していく、という議論だ。本書は、なぜこのカーブが存在するか、ということについて欧米の長期統計を駆使しつつ緻密な議論を展開している。 「生産要素に対する報酬率の変化」、つまり労働者内部での賃金格差が拡大したから、というのがその答えだ。工業化が進むと、労働と資本の比率が変化し、労働者一人当たりの生産性は飛躍的に増大する。でもそれは全ての労働者に対して平等に起こるわけじゃない。例えば、農業のように労働集約的な産業での技術進歩は、工業に比べてきわめてゆっくりしたものでしかなかったし、また工業の中でも、もっとも劇的な技術革新は、それまでたくさんの非熟練(単純)労働を雇っていた部門で生じた。その結果、単純労働者の多くは「お払い箱」になり、いわゆる熟練工との賃金格差はどんどん拡大する。これがクズネッツカーブの上昇局面だ。そしてクズネッツカーブが下降を始めるのは、資本主義が成熟して技術進歩が必ずしも労働節約的なものではなくなり、技術の習得に必要な時間も短縮されるようになってからだ。つまり、技術革新によって生じた不平等を解決するのにもっとも効果があったのは、結局さらなる技術革新だった、ということだ。 また、本書ではこういう統計的な分析を通じて、19世紀のヨーロッパは今のラテンアメリカと同じくらい不平等な社会だったことや、当時のイギリスの「救貧法」による生活保護は現在の福祉国家が提供するよりずっと手厚かったことなども明らかにしている。 今日の福祉政策や途上国に対する援助のあり方を考える上で、本書は避けて通れない必読書だといえるだろう。
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この記事は2006/6/6に作成しました。
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